大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 マイクロ機械科学部門

流体物理学領域 梶島・竹内研究室



研究室の紹介

流体工学とは

 「流体」とは、各部分が互いに自由に動くという意味で、「固体」とは区別される物質の総称です。 要するに「流れるもの」です。しかし、見方によっては氷河も砂漠も流れています。 このように、時間や空間のスケールを広げると流体と固体の区別はたいへん難しい。 その意味で厳密な定義はできないのですが、常識的には水や空気に代表される液体と気体をまとめて「流体」とよんでいます。 「水は方円の器にしたがう」が最もその性質をよく表現していると思います。

 「流体工学」とは、「流れ」の現象を「工学的」に取り扱う学問分野で、 その基礎となる「流体力学」「連続体力学」は古典力学に属すると考えられています。 古典力学というと、時代遅れとか、ローテクというイメージがあるかも知れませんね。 しかし、工学的には「流れ」は常に中心的な課題です。 「工学」とは、扱う対象が解明されているか否かにかかわらず、世の中のために新しいものやシステムを作ったり、 あるいはそのための技術を開発したりする立場です。

 「流れ」の現象にはまだまだ未解明の問題が多く残されています。 したがって、「流れの物理」を探求することはたいへん重要です。 しかし、技術的なブレイクスルーにつながる新しい方法の提案がなければ 「工学」として研究する価値はないと思っています。


美しくしなやかな乱れを目指して

 「流れ」は、自然現象、工業装置から日常生活まで、あらゆる場面にかかわる物理現象です。 「流れ」の予測や制御は、特に社会が直面するエネルギーや環境のさまざまな問題に対して重要な技術です。 しかし、大気の流れである気象の予測が難しいことからわかるように、現実の「流れ」はたいへん複雑な ふるまいを見せます。それは、「流れ」のほとんどが「乱流」という状態にあるからです。 「乱流」は、非常に広いスケールにわたって大小さまざまな渦が複雑に入り乱れた現象です。 「乱流」は予測どころか制御もままならず、 「加茂川の水、さいころの目、山法師」といったところでしょう。

 竜田河 もみぢみだれて 流るめり
   わたらば錦 なかやたえなむ(古今283)

しかし、乱れは美しい。この流れをさらに美しくしなやかに変えてみたい。 それが当研究室の究極の目的です。 そのために、数値計算によって「乱流」を再現します。 そして、乱流現象のさまざまなふるまいを解析したり、 境界の状態、添加物や外力などで操作したりして制御の可能性を探求します。


数値実験の確立に向けて

 なぜ数値シミュレーションを使うのかというと、乱流の理解のためには時々刻々 うつり変わる流れの速度と圧力のデータが有用だからです。 実験では、実現象を扱うという強みはありますが、現象に影響を与えずに、 しかも4次元(時間と3次元空間)のデータを求めることは不可能と言ってよいでしょう。 それに対して、よほど複雑な物性の流体でない限り、「流れ」を支配する基礎方程式は与えられています。 したがって、正確な数値計算が可能であれば、実験にまさる研究ツールとなる可能性があります。

 しかし、遺伝子の解読は直ちに生命の理解を意味しないのと同様に、 「流れ」のあらゆるデータが得られることと「流れ」を理解することの間には大きな隔たりがあります。 数値計算の結果が正しいか判断したり、そこから物理を理解したり、 さらに工学的に応用したりする必要があります。 つまり、意味のないデータである「情報」を「知識」に変えなければなりません。 そのためには「流体力学」「連続体力学」とともに 数値シミュレーションの「数理」の基礎が欠かせません。

 当研究室では「数値実験」の立場で「乱流」を代表とする「流れ」の現象を「工学的」に考えています。 つまり、「流れ」を 'in silico'(コンピューター[シリコン]の中)で限りなく'in situ' (自然のまま)に近く扱う手法の確立と応用を目指しています。 そのために、数値シミュレーションの方法、現象の解明と数式表現(モデリング)に関する研究を行っています。


最近の主な研究